本書も残りわずかとなったので、ここで最終確認をしておく。私は本書の中で、信じると言う言葉を、振りかざす人たちについて、例をあげてきたが、その人たちのことを我儘な大人だと思っている。ここまで読んでくれた、共感はしていないくても、私の言っている意味は分かるはずだ。
ただ、人を好きになることだけは忘れないでほしい。ここに損得勘定はない。信じるとか、信頼するとかではなく、ただ、単純に人を好きになればいい。そうすることでいい人間関係は築ける。この好きという感情は、異性だけではなく、上司、先輩、後輩、同期、友人、あなたに関わる人、すべての話である。
あなたが、相手のことを好きになれば、単純に、相手のことを考えるようになる。そして、相手も損得勘定で『信頼しています!』と言われるより、自分のことを考えて、接してくれるあなたと、付き合いをしたいと思うだろう。
また、人を好きになることで、あなたの成長にも繋がる。これは、人は人から学び成長する生き物だからだ。私たちは、自分とは違う他人という存在があるから成長している。そして、人には感情があるから、相手に好意を持っていることで、相手の価値観、考え方から、たくさんのことを学ぶことができる。相手に好意を持っていなければ、そうはならない。
ここで、勘違いをしてほしくないのが、損得勘定で、人を好きなれといっている訳ではない。人を好きになるというのは、人に興味を持って、素直に相手の話を聞き入れる状況を作るということだ。相手から、いい話を聞き出すために、相手に媚を売るのとは、まったく違う。
私の身近な例であれば、私とスタッフの関係が分かりやすい。スタッフは、それぞれ個性を持っていて、少し変わった人もいれば、真面目な人もいる。綺麗事に聞こえるかもしれないが、私はそんな個性のあるスタッフに好意を持っている。仕事を依頼するだけの作業員だとは考えていない。
私が代表取締役という立場であっても、スタッフに興味を持って、普段から接しているから、スタッフと会話をすれば、仕事以外の話であっても会話は弾む。そうした会話から、自分の知らないことを学ぶことができる。これまでスタッフからは、本当に多くのことを学ばせてもらっていて感謝でしかない。また、スタッフの性格なども、ある程度は把握しているので、新しい仕事を任せる場合も、適材適所を見極めて、仕事を任せることができる。
プロジェクトがうまく進まなくても、私とスタッフの関係は、お互い期待感を押し付けているわけでもなけではないので、問題が解決した後は、過去の出来事として、失敗談や苦労話を、一緒に笑って話すことができる。プロジェクトがうまく進めば、スタッフも喜んでくれる。それは経営者として、嬉しいことだし、個人として充実感を得ることもできる。
これは、私がスタッフのことを好きだからこそ、いい関係を築けている。相手を信じていなくても、このような関係は築ける。ちなみに、スタッフは、私がこのような電子書籍を出版していることを知っているし、一部のスタッフは、この本を読んでいる。それでもスタッフとの関係は崩れない。つまり、相手のことを信じなくても、人のことを好きになることを忘れなければいい。
もし、誰にも興味を持たず、好きになることもない。そんな人生を選択すれば、その人生はどうなるだろうか?おそらく、いつまでも、自分の世界観という、小さな枠の中だけに住む、孤独な人生になるだろう。