本書のタイトルをつけるにあたり「努力は裏切り者」と書くのに、少し躊躇いがあった。それは、全ての努力が裏切るわけではないからだ。ただ、世の中には、本人は一生懸命、努力しているつもりでも、その努力が報われずに、不満が充満しているように感じた。
そんな状況の中では、これから目標を立てて、未来の扉を開けようとする挑戦者たちを、不安の渦に巻き込みかねない。そうなっては、世の中は負のエネルギーに満ちてしまう。だから、少し大胆ではあったが、「間違った努力をしない知恵」と付け加え、落ち着いたのである。
私が本書を執筆したのは、努力して失敗した過去がある人に、正しい努力は、報われることを知ってもらうことで、これから努力をする人たちの、よき手本となれればという思いであった。そして、まずは、裏切る努力を解体することから始め、検証して、裏切らない努力へと、再構築を試みたのである。
本書を通して言えることは、自分の目的を果たすには、自分の力が必須だということだ。これが、裏切らない努力の根本的な考えになる。これは、当たり前といえば、当たり前のことになる。ただ、努力が複雑に絡み合い、そんな当たり前の裏切らない努力さえも、見失われているのが現状だった。この現状の努力を解きほぐし、再度、未来の扉へと繋げていく。その方法を細かく伝えたのが、本書になる。
ただ、私が本書で書いてきた正しい努力は、当然の努力ではあるのだが、それが、決して簡単ではないことも事実だ。時間が経てば、目的を掲げた時の情熱も薄れ、見えない扉に不安や焦りを感じてしまう。進んでいる道さえ、見失いそうになるかもしれない。しかし、それでも続けていけば、必ず未来の扉にたどり着き、その鍵を開けることができるのだ。だから私は、本書で努力は裏切ぎるが、正しい努力は裏切らないと伝えてきた。
「(前略)私が今あるのは、自分の努力によってである。あなたが今あるのは、たまたま生まれがそうだったに過ぎない(中略)ベートーヴェンは私1人だけだ」
これは、ベートーヴェンの言葉で、彼の後援者である侯爵に告げたとされている。ベートーヴェンを知らない人はいないと思うが、彼は幼い頃から苦境にあり、若くして難聴を患った音楽家だ。その自らの苦難の数々を、自分の音楽を創りあげることで、乗り超え、喜びに変えた。
そして後には、音楽は、富を持つ人のためではなく、貧しい人に捧げるものだと、他者のために音楽を書くとことに情熱を注いのだ。その彼の音楽が、死後2世紀ほど経つ今も、私たちの道しるべとなっている。
この言葉を残した当時、芸術家は、宮廷のために作曲をする時代だった。その時代の風潮や、他人に惑わされずに、彼自身の目的のために努力したことが読み取れるはずだ。彼の音楽は時代にも流行にも流されず、確固たる芯を音楽に宿している。
これを、本書の内容で置き換えるならば、あなたの目的を果たすために、あなた自身が、正しい努力をしていけばいい、ということだ。苦難もあるかもしれない、しかし、正しい努力と間違った努力を見極め、続けていくことで、結果を残せるのだ。
彼が導くように、私たちの努力の果てには、必ずあなた自身の未来の扉が待っている。私も、あなたが、あなた自身の目的のために励み、必ず未来の扉を開けてくれると信じている。